右手を眺めて

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私は、脳出血の後遺症で右半身不随となり、後にうつ病に陥ってしまった自分の手記を綴り始めた。半身不随とうつ病に向き合うために。 身体障害と精神病。これらを正面から向き合って理解すること。これは私にとって過酷な作業であり、また時には残酷な作業でもある。

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12話

オラァの病気、うつ病。当初は2〜3ヶ月で退院できる予定だっただ。2月中には退院して現場復帰する予定だっただよ。だけどな、この病気なかなか厄介だで、簡単には治ってくんねぇよ。
オラァの場合だけどな、一日の中に浮き沈みがあるだ。体中がだるくて身の置き所がなくなっちまった感覚やベットの上から動けなくなっちまう感覚。背骨がむずむずして体がばらばらになっちまう感覚や暴れだしてなんもかもめちゃめちゃにしたくなっちまう感覚。こんな感覚が一日の中で2〜3回襲ってくるだ。最悪な日には一日中こんな感覚の中で過ごしてるだよ。
こんな一日の波が1〜2週間の中で良くなったり悪くなったりするだよ。そんなことを繰り返しながら少ぉしづつ良くなってくだよ。
一ヶ月単位の大きな波の中に1週間単位の中っくれぇの波があって、中っくれぇの波の中に一日単位の波があるだ。一日の波を見てると気付かねぇが、一ヶ月単位の大きな波を見れば、だんだん治ってくのが見えてくるだ。そんな呑気な治り方だだよ。
先生に言わせれば「薄皮を剥がすようにですが、確実に良い方向に向かってますよ」ってことだわぃ。

その朝ぁ、オラァ起きれなかっただ。
眼は覚めてるだがな、起き上がれなくなっちまっただよ。体に力が入らねぇだし、咽の奥が詰まって泣き出しそうになっちまうだし、ぼぉっとした頭で布団に潜り込んでただ。
「朝食は食べられそうにない?」
「・・・・」オラァ首を横に振るだけだで。
「困ったわねぇ・・・薬だけでも飲もうね」
「・・・・」オラァ首を縦に振るだけだで。
看護士さんに薬を飲ましてもらって、また布団に潜り込むだけだで。
とうとうその日は飯も食えずに布団の中にいただ。起きてるでもねぇ寝てるでもねぇ、不思議な感覚が一日中オラァをとり巻いてただ。

それからだ。オラァ自分でも不思議なくれぇ人が変わっちまっただ。
オラァどっちかってと人と話したり一緒にいるのが好きな方だっただけど、人を避けるようになっちまっただ。
人と挨拶をすんのも嫌になっちまった。人と目が合えば挨拶しなきゃならねぇから、人と目を合わせなくなっただ。
「たけちゃん、最近、元気ないね」
「あぁ」
「よっぽど具合が悪いんだね」
「あぁ」
仲良くなった患者さんに声をかけられるのも面倒になっちまった。
オラァが愛想なくするもんだから、みんなだってだんだん声をかけなくなるでな。
オラァみんなと目も合わせねぇだから、どんどん独りになってくだよ。
そんなんが一ヶ月も続いたっけ。
独りになると楽でな、不安や焦りやもやもやした気持ちを腹ん底にぎゅって押し詰めて、布団を被るだ。
そこにゃ、やっぱり見栄も恥も意地も無くしたオラァがガタガタ震えながら丸まってるだ。
相変わらず涙がぼろぼろ止まらねぇ。
厄介な病気だでなぁ。
posted by たけぱん | Comment(0) | TrackBack(0) | 手記
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