右手を眺めて

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私は、脳出血の後遺症で右半身不随となり、後にうつ病に陥ってしまった自分の手記を綴り始めた。半身不随とうつ病に向き合うために。 身体障害と精神病。これらを正面から向き合って理解すること。これは私にとって過酷な作業であり、また時には残酷な作業でもある。

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19話

明日は退院だで。
今までのイライラやソワソワやモヤモヤが嘘みてぇになくなっちまった。
朝から落ち着いた気分で、とっても安定してるだ。こうゆうのを開き直りってのかやぁ。
あまり仲良くなかった患者さんや、ひと悶着あった患者さんまでが愛しく感じられるだ。不思議なもんだ。人なんたった一晩でこうも変われるもんだだな。
今夜はワクワクして眠れそうにねぇやぁ。

退院日、4ヶ月間一緒に入院してた荷物を台車に載せて玄関へ向かっただ。ちょっとした鼻歌気分だで。
「やっと帰れるなぃ」
「そうね、でも、これからも療養なんだからハメはずしちゃだめだよ」
「ふふん、解ってるって、今日ぐらいルンルン気分でいいだねぇかぁ」
「ふふふ、そうだね」
受付で退院手続きをしてると、懐かしい声が後ろで、「たけさん、久しぶり。やっと退院かい?」
「ん?・・・おぉ、カタさん、どうしただ?」
以前、同室で入院してたカタさんだでや。
「今日は通院でね・・・で、どう?調子は?」
「バッチシさぁ、まかせれやぁ、ははは。カタさんは?」
「毎日家でウロウロしてるよ」
「そうかぁ・・・」
「会社は潰しちまったし、この歳で再就職もなかなかなぁ」
「・・・・・」
「まっ、お互い元気になればいいな」
「そっすね・・・」
カタさん、悩んでたけど、とうとう会社潰しちまっただなぁ。歳のわりに子供が小せぇで、大変だずなぁ。

「ちょっとごめんなさいね、後ろ通ります」
「あっ、はい」
看護士さんが新しい入院患者を案内してるで。
「この先が病棟になりますが、先ずはこちらでお荷物のチェックをさせていただきますね」
あぁ、オラァが入院した時と同んなじだで。
患者のお母さんかやぁぺこぺこ頭ぁ下げながら検査されてる。患者さんはまだ若そうだに、大変だわなぁ。

「アンタ、終ったよ」
「お、おぉ」
退院の手続きが終った頃、若けぇ患者さんの荷物検査も終ってだで。
お母さん、まだ頭ぁぺこぺこ下げてる。
看護士さんに誘われるように、病棟の扉の向うへ行っちまった。

「おい、若けぇの、この病気、必ず治るからな、ゆっくり焦らねぇで治すだぞ」
オラァ、自分にも言い聞かせるように呟きながら玄関の外、桜が咲き始めた駐車場へ向かっただ。
posted by たけぱん | Comment(0) | TrackBack(0) | 手記
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