右手を眺めて

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私は、脳出血の後遺症で右半身不随となり、後にうつ病に陥ってしまった自分の手記を綴り始めた。半身不随とうつ病に向き合うために。 身体障害と精神病。これらを正面から向き合って理解すること。これは私にとって過酷な作業であり、また時には残酷な作業でもある。

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20話

自宅療養ってやつが始まって3週間が経とうとしてる。
あんとか気ぃ振り絞って畑仕事ぉやったりもするだが、長続きしねぇだ。
ずくぅ無くなっちまったで、どうしようもねぇ。

「爺ちゃん、オラァもう・・・って思うことがあるだよ。
 体ぁ思うようになんねぇし、気まで緩んじまっただ。
 朝起きて飯食って、具合が悪くなって布団に潜り込んじまう。
 昼近くにもぞもぞ起きてきちゃぁ昼飯だ。
 その後ぁぼぉっとしてパソコンいじったり土ぃいじったり。
 それだって全然気が入ってねぇ。ただいじってるだけだで。
 オラァもぬけの殻んなっちまった。どうしらずぅ。
 爺ちゃんに教わったように、真面目に目一杯働けなくなっちまった。
 一日中ぼぉっとして過ごすようになっちまった。
 爺ちゃん、オラァどうしたらいいだかわかんねぇよ。
 爺ちゃん、オラァどうしたらいいだ?
 頼むわぃ、教えてくりやぁ・・・」

仏壇代わりの本棚。ちっこい爺ちゃんの写真は笑ってるだけだで。

 「たけっ、このバカタレがっ。シャキッとせいっ」
 って怒鳴ってくりやぁ。

「なぁに、たけのことだで、心配ねぇさぁ、なぁ」
 って優しく言ってくりやぁ。

「お前たちの思うようにすればいいだぞ、なぁんも心配する事ぁねぇ」
 って言ってくれたっけなぁ。
 だけどなぁ、爺ちゃん・・・だけどなぁ・・・・・

ちっこい笑った爺ちゃんを袖で拭いてやっただ。
うす埃が落ちて・・・爺ちゃん、ごめんなぁ。

「いいさ、たけ。そんな事より、今年ゃトマト供えてくれるだかぁ?」
 まだ芽ぇ出てねぇだ。暇はあるだけど、手間ひまかける気が・・・

「いいさ、たけ。やる気がなきゃ出るまでの辛抱だで。心配するなぃ」
 オラァ爺ちゃんとの約束ぅ破ったみてぇで・・・ 

「あにさぁ、時にゃぁ休むも肝心だでな。ゆっくりしれやぁ」
 オラァ、もう、あにがあんだかわかんねぇよ。

「あに言ってるだぃ、なぁんも心配する事ぁねぇさぁ、なぁんもなぁ」

袖で拭いた爺ちゃんを本棚に戻してやっただ。
仏壇代わりの本棚。ちっこい爺ちゃんの写真は笑ってるだけだで。
posted by たけぱん | Comment(0) | TrackBack(0) | 手記
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