右手を眺めて

1 PIC00217.jpg 2

私は、脳出血の後遺症で右半身不随となり、後にうつ病に陥ってしまった自分の手記を綴り始めた。半身不随とうつ病に向き合うために。 身体障害と精神病。これらを正面から向き合って理解すること。これは私にとって過酷な作業であり、また時には残酷な作業でもある。

スポンサードリンク

25話

「どうすんの?」・・・女の声。
「ばぁか」・・・男とも女ともつかない声。
クスクスと遠くで笑い声。
ボソボソと耳元で話す声。

幻聴が始まっちまった。
普通、うつ病で幻聴はないって先生言ってたけど、聞こえるだ。
これが始まると、きまってやりたくなる事があるだよ。
ボソボソと、何言ってるだかわからねぇだけど、こうしろって言ってるみてぇなんだ。

・・・・・
こうしてな、右手をテーブルに広げろ。
もっと広げろ。ぎゅうっと広げろ!
よし、そうだ、そのまんまだぞ。
左手、包丁を持て。
力いっぱい握るだぞ。
そうだ、その調子だ。
ほれ、思いっきりやってみろよ。
右手を何度も何度も刺してみろ。
思いっきり刺してみろ!
・・・・・

オラァ恐くて恐くて。
「オラァおかしくなっちまっただねぇかやぁ」
「大丈夫だって。そんな脅しにのっちゃだめだよ」
女房は気を楽にしてくれるけど、オラァ・・・
先生には薬をもらっただ。幻聴が聞こえたら飲めばいいって。
飲むと体がだるくなってな、何にもする気がしねぇだよ。

「ちょっと婆ちゃん家、行ってくるから。何かあったら電話してね」
「・・・あぁ・・・」
「大丈夫?」
「・・・・・」
オラァ体はだるいだけど、気持ちがぴんぴん跳ねるように恐かった。
一人んなるのが恐かっただ。
「一緒に行く?車で寝ててもいいし・・・」
「・・・あぁ・・・」

しばらく、こんなのが続いたっけ。
耳の後ろに誰かいるようで、びくびくしてただ。
posted by たけぱん | Comment(0) | TrackBack(0) | 手記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。